うっかりなぞかけ

 それは、まだ志摩子が小寓寺の娘だということが秘密にされていた頃の、とある麗らかな午後。
 薔薇の館に集まったつぼみとその妹たちは、暇を持て余して謎かけに興じていた。
「では恐れながら」
 と前置きして、令が口火を切った。
「志摩子とかけましてー、男性の喉ととくー」
 一同は「おぉ」とざわめいた。
 一見なんの共通点も無さそうな二つの言葉。特に志摩子は自分の名前が出て少し驚いた。
 祐巳と由乃は場を盛り上げようと、揃って元気良く合いの手を返した。
「そのこころはー?」
 それに応えて、令は得意気な顔をして、声高らかに答えた。
「どちらも仏さまが隠れております」
 聞くや祥子は飲んでいた紅茶を思わず吹き出し、否も応も無く謎かけを終了させた。

おしまい。

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