二年松組小景

 とある日の二年松組の教室。
 祐巳さんが、ふーんふーん、と何度もため息をついている。
「どうしたの祐巳さん、ため息ばかりついて」
「ああ由乃さん。いや、大したことじゃないんだけど、実は今日、家族みんなが寝坊しちゃって、お弁当が用意できなかったの」
「ああ、そうなの。途中で何か買ってこなかったの?」
「家を出たのも遅かったから買う時間無くって」
「あらら。じゃあ購買か学食?」
「うん、お姉さまと一緒に食べたいし、購買で何か買って薔薇の館に持って行こうかと思ってる」
「ふむ……」
「……何?由乃さん」
「……ここは、わざと手ぶらで行くという手もあるわね」
「え?手ぶら?」
「そう。そうしたら祥子さまが、祐巳、お弁当は?って」
「ふむふむ」
「それが今日は家族がみんな寝坊して作ってもらえなくて、購買のパンも売り切れで、学食も満員で……と、答える」
「ほほう」
「すると祥子さまが、仕方ないわね。祐巳、あーんしなさい。と言ってたまご焼きを祐巳さんの口に」
「まぁ!」
「祐巳、他に食べたいものは?」
「えっと、じゃあごはんを」
「そうね、おかずの後はごはんよね、ほら、あーん」
「あーん」
「よく噛んでお食べなさい」
「はい、とってもおいしいです」
「どう?」
「素晴らしいわ!由乃さん天才!」

 その日の昼、祐巳さんは購買でパンを買ってみんなと一緒にごはんを食べた。

おしまい。

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